漢方治療エビデンスレポート
日本東洋医学会EBM委員会エビデンスレポート/診療ガイドライン タスクフォース
10.
呼吸器系の疾患
(
インフルエンザ、鼻炎を含む
)
文献
吉本達雄, 森壽生, 倉田文秋, ほか. 春季花粉症に対する小青竜湯と麻黄附子細辛湯の効
果 - 両 方 剤 効 果 の 検 討 -. Therapeutic Research 2002; 23: 2253-9. 医 中 誌 Web ID:
2003161479 MOL, MOL-Lib
1. 目的
春季花粉症に対する小青竜湯と麻黄附子細辛湯の効果を比較評価
2. 研究デザイン
準ランダム化比較試験 (quasi-RCT)
3. セッティング
内科診療所 (5施設)
4. 参加者
上記施設を初診で受診した花粉症 (アレルギー性鼻炎) 患者のうち、過去に花粉症を指
摘された患者と、本年初めて鼻炎症状を呈した患者の場合は鼻汁好酸球試験陽性かつ
IgE高値の患者66名。虚証、副鼻腔炎、鼻中隔彎曲症などの鼻疾患、アレルギー性結
膜炎以外の結膜炎、妊娠、漢方薬の服薬を拒む患者は除外された。
5. 介入
Arm 1: ツムラ小青竜湯9.0g 分3 (34名)
Arm 2: ツムラ麻黄附子細辛湯 7.5g 分3 (32名)
併用薬は禁止し、症状が強くやむを得ない時にはインタール点眼もしくは点鼻薬使用
6. 主なアウトカム評価項目
症状改善度: 服薬2週間後の鼻症状と眼症状を5段階評価
全般改善度: 服薬2週間後の鼻症状の重症度推移を観察期重症度と比較し、また眼症状
も考慮し、5段階評価 (麻黄附子細辛湯は速効性があるため服薬開始1週
から症状の推移を記録している)
概括安全度: 服薬2週後の副作用の有無と薬剤と因果関係より5段階評価
有用度 : 全般改善度と概括安全度を総合的に5段階に評価
7. 主な結果
症状改善度は各項目について χ
2
検定と U 検定にて比較したが、くしゃみ (小青竜湯
41.2%、麻黄附子細辛湯59.4%) 、鼻汁 (47.1%、53.1%) 、鼻閉 (58.8%、37.5%) 、眼周
囲掻痒感 (35.3%、45.2%) 、流涙 (23.5%、19.4%) 、眼脂 (11.8%、9.7%) と、いずれも
有意差を認めなかった。全般改善度についても軽度以上の改善 (小青竜湯67.6%、麻黄
附子細辛湯71.9%) 、中等度以上の改善 (52.9%、53.1%) と両群間に有意差を認めず、
有用度についても「有用」以上となったのは小青竜湯で50%、麻黄附子細辛湯50%と
有意差を認めなかった。
8. 結論
麻 黄附 子細 辛湯は 花粉 症に 対し 小青 竜湯と 同様 に有 効な 薬剤 である こと が示 唆さ れ
る。
9. 漢方的考察
麻黄附子細辛湯は小青竜湯より虚証向きであり、高齢者や虚弱体質者にまで適応でき
る薬剤として有用と思われる。
10. 論文中の安全性評価
両群とも副作用は認めなかった。
11. Abstractorのコメント
花粉症に対する小青竜湯のRCT (耳鼻咽喉科臨床1995; 88: 389-405. ) を受けての臨床試
験であり、同様のアウトカムを使用している。しかし割付方法が外来受付順のため、
厳密な意味でのランダム化がなされておらず、CCT (clinical controlled trial: 準ランダム
化比較試験) とした。有意差を認められなかったが、臨床的には花粉症治療の選択肢が
広がったという意味で意義ある結果と思われる。
12. Abstractor and date
鶴岡浩樹 2007.6.15, 2008.4.1, 2010.6.1